蘇らせ屋のボクとヒトゴロシのキミ
「和男にも彼女ができたらよかったんだけどね」


出口へ向かいながら若竹さんはそう呟いた。


「恋人がいらっしゃらなかったんですか？」


柚木さんが食い込んだ話しに持って行こうとするので、僕は彼女の背中をつついた。


しかし柚木さんに撤回する気はなさそうだ。


「えぇ。本当に仕事好きな子だったから、浮いた話はなにも。もう40近かったから、心配は心配だったんだけどね、最近は未婚でも珍しくないみたいだから、あまり言わない方がいいのかもって思って……」


そこまで言い、若竹さんは立ち止まってしまった。


「どうしました？」


そう聞くと、若竹さんは目じりに浮かんでいた涙をぬぐった。


和男さんのことを思い出したのだろう。


蘇らせ屋に依頼してくるということは、まだ49日も経過していないということだ。


依頼者の心はナイーブな状態にあるから、会話も踏み込み過ぎてはいけないのだ。
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