プロポーズは突然に。













9年前、初めておまえを見た瞬間からずっと俺の心の中にはおまえがいた。



名前も知らない、知りようもない。


ただ…考えられないほど残酷な状況の中、凛としていたその姿は俺の心に深く残った。



5年前、参列した葬式で再びおまえを見つけた時も…凛としていた。


気丈に、涙一つ流さず、前だけを向いていた。


ユリのように美しくて強い。そんな印象。


でも、きっとその何倍も…儚くて、脆い。



その時知ったのは父親と苗字が違うということと、母親の職業。


それ以外の情報を得ることはできなかった。


捜しても見つからない、見つけようもない。



迫る結婚までのリミット。


もう諦めていたときに…また出逢えた。


あの頃と変わらない、おまえに…また逢えたんだ。


これを運命と呼ばずになんと呼ぶ?



──やっと手に入れた。絶対に逃がさない、離さない。









< 107 / 370 >

この作品をシェア

pagetop