プロポーズは突然に。
今日も好奇の目に晒されることとなった。
もう車では行かない、歩いて行く。と、いくら言っても彼は認めてくれず半ば無理矢理押し込まれるような形で車に乗せられたのだ。
…もうこんな思いはまっぴらごめんなのに。
せめてもう少し人目に付かないところで降ろしてくれればいいのに。
不満は山程あるものの、既に後部座席のドアを開けて頭を下げる日下さんに申し訳なく思い意を決して車を降りた。
「いってらっしゃいませ、奥様」
「…いってきます」
ここは都内の中心部。通勤、通学ラッシュのこの時間は人で溢れ返っていて嫌でも目立ってしまうというのに。
普通の人間の私に“奥様”って…通り過ぎる人達は目を丸くしてるし勘弁してほしい。
ため息混じりにそんなことを考えていると後ろから彼が私を呼ぶ。
「桃華」
「なに?」
「帰りも日下に迎えに行かせるから」
「…いい。いってきます」
また愛想なく返し、そのまま振り向くことなく足早に車から離れた。