プロポーズは突然に。
「そうじゃないって。もしかして聞いてないの?」
「何を?」
「うち、母親がいないんだよ。昔から病弱な人でずっと入院してたんだけどね。9年前に亡くなった」
「…そう、なんだ」
9年前に母親が……か。
消し去ったはずの記憶がまたちらついて、少し目を逸らしたくなったけれど…何とか堪えた。
「だから嫌味とかじゃなくて。母の手料理とか食べたことなかったからさ、純粋におねーさんの手料理が嬉しかったんじゃないのって話」
「…そう」
「本当に知らなかったんだ?普通、夫婦ならそういう話しない?」
「…夫婦でも他人だから。別に興味ない」
「わぉ、シビア。二人は普通じゃないってことね」
キョトン、とした様子の律くんを見て思う。
…“普通”って何なんだろう。
逆に何が“普通”じゃないんだろう。
子供の頃から考え続けているけれど私には分からないんだ。