プロポーズは突然に。
それから特にそのことを聞かれることもなく、他愛もない話をしながらも急ぎ足でランチを終えた。
食後、足元に置いていたキャンバス地でストライプ柄の手提げを手に取り、膝の上に乗せる。
これは、休憩時に財布等を入れて持ち歩くためのもの。
その中を探り口紅を取り出すと、隣にいる咲ちゃんがズイッと顔を近付けてきた。
「あ、それ!前どこのか聞こうとしてる途中で接客入っちゃってすっかり忘れてた」
「あー、そういえばそうだったね」
「見せて見せて、どこの?」
興味津々な様子の咲ちゃんは、まだ塗る前の口紅を私の手からヒョイッと取り上げる。
そして、ゴールドのルージュケースの中央に刻まれたブランド名が目に入ったのか、一瞬で目を丸くした。
「rosso piumaって…え、これロッソ・ピウマの?もしかして旦那からのプレゼント?」
「違うよ。それは友達に頼んで海外で買ってきてもらったもので……結婚前から使ってたんだ」
「え、そうなの?」
「うん、」
「じゃあラッキーじゃん。これからは旦那に貰えばいいんだし」
「…うん、」
「んじゃ、ついでに私のも貰ってきてね」
なーんてね~、とかなんとか言いながら咲ちゃんから戻ってきた口紅を受け取り、それを唇に添わせるようにソッと塗った。
やっぱり…いつも通り胸が苦しくなった。