プロポーズは突然に。






────あれは9年前のこと。





その日、俺は入院している母のお見舞いをするために病院にいた。



当時の俺は、海外で美容について学んでいて…


高校時代から海外に留学していた俺にとって、その日は久しぶりに帰国した日だった。



少し前に、母の体調が思わしくないとの連絡を律から受け、帰国した俺はその足で病院へと駆け込んだ。



元々体の弱かった母の体調には波があり、昔から良くなったり悪くなったりを繰り返している状態で。


だけど、ここ数日は何度も危険な状態に陥ったらしく…だから、ある程度の覚悟をした上での帰国だった。






母は体こそ弱かったものの、芯はとても強い人だった。


それなのに久しぶりに会った母はとても弱々しくて…


意識があるのかないのか、声を掛けても届かずうっすら目を開けたまま天井を眺めているだけ。そんな状態。

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