プロポーズは突然に。
それからどれだけ時間が経ったのか…
その女は飽きもせずにひたすらそのページを眺めていた。
『…その人のファンなのか?』
俺の発したその声に、女はビクッと肩を揺らして、こちらに視線を向ける。
そして、ゆっくりと首を横に振りながらポツリと呟いた。
『そういうのじゃないです。ただ、この人の笑顔が見たくて…』
『ふーん…』
そういうのをファンって言うんだろ、って思ったけど…まぁどうでもよかったし何も言わなかった。
『……当たり前のことにこそ感謝』
『…は?』
『口癖なんです、この人の』
『口癖?』
『誰かと挨拶を交わすこととか、誰かとご飯を食べれることとか、誰かに…愛されることとか』
『…』
『みんな気付かないかもしれないけど…そんな当たり前は奇跡なんです。すごく恵まれているんです』
そして無表情だった女はぎこちなく微笑み…
『どんなに恵まれていても…忘れないでくださいね』
そう言って、ありがとうございました、と俺に頭を下げると、雑誌を返してきた。
かなり衝撃を受けた。
自分よりも年下の女に己の人生を諭されたような、そんな感覚。