プロポーズは突然に。

重なる想い





「あの時から…ずっとおまえだけを想ってた」





震える私の手をしっかりと握った彼が、真っ直ぐに私を見ながらそんな言葉を紡ぐから、私の視界は滲む。


あの時も、彼は冷たい世界で生きてきた私に温もりを与えてくれた。


手を差し伸べてくれた。


今、ハッキリと思い出したんだよ。


残酷な状況の中、あの瞬間だけは全てを忘れられたこと。




口紅のこともずっと疑問に思ってた。

高校生になった私に父が送ってくれた海外のファッション雑誌を見て、理由は分からないけれど、やけにローズカラーの口紅が気になって…

それを父に伝えたんだっけ。


あの口紅は、父とだけじゃなく彼とも繋がってたんだ。


そう思うと…少しだけ胸の痛みが軽くなった気がした。


< 359 / 370 >

この作品をシェア

pagetop