秘密の恋は1年後

「社長」
「ん? なに?」
「その……き、キス、しますか?」
「したくないんじゃなかった?」

 もじもじしながら、俺に手を引かれるままに歩く彼女に心が乱される。
 キスしたくないって言ったくせに、今度は路上で誘ってくるなんて、どういうつもりなんだろう。

 ふと立ち止まって、まひるを見下ろす。
 そして、腰を折って屈み、彼女の顔を真正面から見つめた。


「どうしてほしいんだ?」

 くりっとした目に、長いまつげ。
 時々微笑むと、つられて浮かぶえくぼもかわいい。
 肌も陶器のようだし、潤った唇はかぶりつきたくなるほど美味しそうで……。


「えっと、あのっ………き、キス……」
「なに? 聞こえない」

 顔を真っ赤にして、口ごもりながらも話す彼女が愛しくて、ちょっと意地悪をしてみる。

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