クールな社長の耽溺ジェラシー


「あれ? 早かったですね」

てっきり広瀬さんだと思って振り向くと、まったく違う人が入ってきて

「そうか? わりと時間通りに来たつもりだけどな」
「に、新野さん……!」

ゆらりと大きな影を揺らして中へ足を踏み入れる。私との距離が詰まるのを感じて、慌てて立ちあがると、早足で会議室の隅へ逃げた。

「……なんでそんなに離れるんだ?」
「前科があるからですよ!」

怪訝そうに眉を寄せる新野さんをキッと睨みつける。

この前、ふたりで下見をしたときになぜか「かわいい」と褒められ、腰までなでられた。ふざけていてもふざけていなくてもあれはセクハラだ。

「前科……?」

新野さんが不思議そうに立ち尽くしていると、うしろからヒョコッとゆるいパーマがかかった頭が現れる。今度こそ広瀬さんだ。

「あ、新野さんお疲れさまです。なんで入り口で立ってるんですか? 中、入りましょうよ」

軽い口調で新野さんを中へ誘いながら、大きな彼の影から会議室へと体をねじ込むと、会議室の隅にいる私を見て目を丸くした。

「え? なんで、こなっちゃんはそんなとこいんの? 遠くね?」
「新野さんに訊いてください」

原因は新野さんだと訴えるように視線を投げるものの、彼は覚えがないとばかりにキョトンとしていた。

「新野さん、なんでですか?」
「さぁ、わからない」

広瀬さんの問いかけに、平然と肩をすくめる。私の腰を触ったことなんて、もう忘れたのだろうか。それとも、あんなの触ったうちにも入らないとか?


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