ダブル~私が選ぶのはどっち~
矢田君は少し興奮している。

「ここへ来るまでも草野主任は吉川さんを連れ帰りそうな勢いだったんですよ。当然吉川さんから別れを告げたんでしょう?よく草野主任が納得しましたね。」

私は矢田君の言葉に驚いた。

「違うわ。言い出したのは草野主任の方よ。」

矢田君は目を大きく見開いた。

「そんなはずはないですよ。だって草野主任は…。」

そこへ林主任と草野主任が出てきた。

「さっ、矢田、帰るぞ。」

そして草野主任は私に手を差し出した。

私はその手を優しく握る。

「本当はこのまま連れ帰りたいくらいだけどな。」

私の耳元で、草野主任はそんな事をつぶやく。

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