ダブル～私が選ぶのはどっち～

「そうです。偶然なんですけど、彼も私が行く支社に転勤が決まったんです。」

「それでか。」

なぜか林主任は大きな声を出した。

「草野が自分の部下の事で人事に取次ぎを頼んで来た事があったんだ。確か…、二人の営業の転勤の話だったはず…。」

「えっ？」

久しぶりに出てくる草野主任の名前に私は驚く。

「詳しい内容は分からないけどな。」

林主任はにっこりと笑う。

「草野の思いは並大抵ではなかったみたいだな。本当に吉川は幸せな奴だな。振った相手にそこまでさせるなんてな。」

私は林主任の顔を見つめる。

ううん、私は草野主任にそんな風に思われる人間ではない。

だから林主任の考えはきっと良い方の勘違いだ。

でも私の気持ちは乱れる。