しょーとしょーと

少し皺になっている。ないよりはマシか。


「ほら」


矢田にハンカチを差し出すと、矢田は「ありがとう」と言って受け取り、頬や目元を拭いた。


花火は次々と打ちあがり、真っ暗な空に大輪の花を咲かせる。


「今日、すっごく嫌なことがあったんだけど、花火見てたらどうでもよくなったかも」


「そうか、それは良かった」


「たぶん……相模のおかげもあるよね。ありがとう」


「お、おう」


泣き顔を見られて照れているのか、矢田の頬に赤みがさしていて、

浩介までむず痒い気持ちになった。


「まあ、なんだ。少しでも役に立てたんなら良かったよ」


矢田を抱き寄せていた間、

微かに触れる矢田の胸に、柔らかいんだな……と考えていたことは秘密だ。



(雨空の花火、終わり)

< 40 / 99 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop