気がつけば・・・愛

結局、夜中に何度も目が覚め
最悪のコンディションで朝を迎えた

早々に家事を済ませると
ドレッサーの前に長く座った

いつもより念入りにアイラインを引き
いつもより光るグロスをのせる

いつもより時間を掛けて
巻き髪を完成させると

首周りにビジューの光る
ニットアンサンブルに柔らかなスカートを合わせた

カメラを忘れないように
小さめのバッグを持つ

途中お気に入りの和菓子屋さんで練切りも買った

初夏の型取りのお菓子の話ができる

お礼の気持ちと
また一緒にお茶をいただけるかも

少しの期待も含めた





渋滞もなくスムーズに到着
階段を昇りながら急に不安になる

ーー40歳なのにーー

いくらお坊さんといえども
5つも年下の男性

ーーお礼の和菓子を渡したら帰ろうーー

山門に到着した時には
難しい顔をしていた


着いた本堂を見て...違和感を感じる

飛び石を避けながら
玄関に回ると

【出掛けています】

違和感の正体
手書きの木札が下がっていた

「……嘘」

いつもより念入りにオシャレしたことを思い出して気分が落ちる

もしかしたら...
邪心が多すぎて
バチが当たったのかもしれない


和菓子の紙袋を
玄関脇のフックにかけると
メモを残した

(昨日はありがとうございました。
カメラを忘れたようで...
探しに来ましたがお留守のようで残念です。
お菓子...お口に合うと良いのですが・・・
あゆみ)

メモが小さ過ぎて
書ききれない気持ちを
【残念】という表現にした

また来ますと書けなかった自分
連絡先も書けなかった...

本当は住職が帰るのを
ずっと待っていたかった気持ちを残して

ため息と共に坂を下った
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