気がつけば・・・愛
二十数年前...

父が住職を務める寺の次男として産まれた自分は
所謂、味噌のパッケージに載っているような可愛い坊主頭だった

寺を継ぐ長男と違い
内向的で...根暗
坊主頭も友達からからかわれるのが嫌で
母に何度伸ばしたいと懇願したことか

小学校へ入学したての交通安全教室の日
クラスの友達には保護者が付き添ったのに

寺の仕事で忙しい両親は
来てくれなかった

ピンチヒッターの保護者役は
6年生の野村あゆみちゃん

サッと手を繋いで頭を傾けると
「よろしくね」
と笑いかけてくれた

男兄弟しか知らない上に
近づいたときに香った甘い匂い
話しかけられてもドキドキして
顔も上げられなかったのに

「りょうけん君って
お坊さんみたいな名前だね」

そう言われた時だけ
うんと頷いた

苗字が“渡部”だったこともあり
運動場に出来た横断歩道や
踏切、見通しの悪い曲がり角を歩く
交通安全指導も一番最後

途中まで友達の歩く様子を見ながら
平気だったのに...
事態は急変した
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