気がつけば・・・愛


翌日いつものように
夫を送り出すと
家事を済ませてハンドルを握る

車寄せに到着すると
笑顔の良憲さんの姿があった

「おはようございます」

下げた頭を起こすと
ドキドキしてすでに頬が熱い

「お待ちしておりました」

さぁと誘導する手のひらを見ながら
心地よく吹く風に押されて石段を上った


「お庭・・・案内しましょう」

山門をくぐると
本堂裏の苔や石灯籠を
良憲さんの解説に耳を傾けながら眺める

「カメラ持ってくれば良かった」

口から出した何気ない声
それに良憲さんが色を加えた

「あゆみさんがまたカメラを持ってくる、
そして現像した写真を見せて貰える・・・

ほらまた2回ここに来る理由が出来ますね

私は毎日でもあゆみさんに会いたいです」

クルクルの目が目尻にシワを寄せ
穏やかな笑顔を作った

「良憲さん」

自分には家庭がある後ろめたさで
毎日会いたいなんて言えない

そのもどかしさを
良憲さんが包み込んでくれる

ーー大好きーー

引き寄せられるように
良憲さんの胸に頬を寄せた
< 32 / 77 >

この作品をシェア

pagetop