気がつけば・・・愛
寛子が全ての書類を広げた後は
身体の震えが止まらない状態だった

「大丈夫?日を改める?」

心配そうに眉毛を下げた寛子を見ながら
頭を左右に振った

「私って自分で考えていたより
可哀想な妻だったんだね」

自虐的に呟いた声に

「一番カッコいい離婚をさせてあげるわ」

目の前の寛子は立ち上がると
笑顔でサッと右手を差し出した

慌てて立ち上がると
その手を握る


「嫌われる覚悟出来た?」

「そんなのとっくに出来てるよ」


本当は騙された17年を振り返って
涙するところかもしれないけれど

それよりも
そこから抜け出せる期待感が勝っていた


そこで
ふと頭を過ぎったのは良憲さんの顔

その変化に目敏く気付いた寛子は

「弁護士には全て話して貰わないと
味方は出来ません」

背筋を伸ばした


「・・・あの」


覚悟を決めると自分のことを吐き出した


「・・・ん。」

テーブルの上で手を組んだまま
固まってしまった寛子を
違う意味で震え始めた自分を抱きしめながら待った






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