気がつけば・・・愛
「・・・っ・・・。」


振り返ろうとするけれど
低い柔らかい声を聞いただけで
涙腺が崩壊してしまった


本当は笑顔で会いたかった

・・・頑張れ私

カメラを握りしめて
気持ちを切り替えようとするけれど

小刻みに震える肩と
ポタポタと溢れる涙は止められそうもなくて

ジャリ・・・
近づく足音をすぐ背後に感じて
グチャグチャの顔を誤魔化すように俯いた


「あゆみさん
もう会えないと思っていました」


背中に打つかる切ない声に

「・・・う・・・っ」

嗚咽が止まらず手の甲で口元を押さえる


「泣かないで」


ジャリと間近で聞こえた砂の音
フワリと背中に温もりを感じて
トクンと胸が高鳴った

背後から抱きしめられたことに
あれほど止められなかった涙が消える

俯いた視線の先に
交差した良憲さんの手と
懐かしい香りの白檀の御数珠が見えた


「逢いたかった」


耳元で囁かれビクッと震える肩


「・・・わ、私も」


「良かった」


もう一度耳元で囁かれる低い声に
この状態を再確認して顔に熱が集まった


「あゆみさん、顔見せて下さい」

「あ、あの、困ります」

涙でグチャグチャの顔なのに
見せられるはずがない
それに・・・鼻水も出てるかもしれない

そんなことを思いながら
誤魔化すように手で涙を拭きとろうとすると

交差された良憲さんの手が解かれ
肩を掴まれて強制的に身体がクルッと反転した



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