season
春馬くんと並んで座るベンチに、今日は菜々子と座る。



菜々子から、何を言われるんだろう。




そう、身構えていたら…




「ね、先生ってどんな人?」



「…え?」



菜々子の口から出た言葉は、予想とはだいぶかけ離れていたものだった。




「私もこの前パッと見ただけだけどさ、かなりのイケメンだよね!夏海って…面食い?」



「え?まあ、確かにイケメンだけど…それ以上にすごく優しい人だったから。ボロボロだった私の心を癒してくれたから。だって、秋山先生が迎えに来るからって嘘をついた私に『俺も一緒に待つよ』って言ったんだよ?」



そこまで話した時、無意識にしゃべっていた自分に気づいた。



「ご、ごめん…こんな喋っちゃって…」



すると菜々子は、嬉しそうに笑った。



「ううん!夏海と恋バナすること、あまりなかったじゃない?親友との恋バナって、めっちゃ楽しいね!」


「菜々子…」



今度こそ、失うと思ってた。



だって私、先生と付き合ってるんだよ?



飽きられて、捨てられると思ってたのに…。




「一緒に帰ったあの日。あの先生と話してる夏海の表情見て、私安心したもん。ああ、夏海が学校で笑ってる!って。」



そんな菜々子の笑顔に、涙がこぼれ落ちる。




「辛かったでしょう?誰にも言えなくて。やっと好きになれた人が先生だったなんて、辛かったよね…」




そう言って私を優しく抱きしめてくれた菜々子の胸で、私は思いっきり泣いた。



これで泣くのは、もうおしまいにしよう。




だから、今だけは…



菜々子の胸で、思いっきり泣いた。


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