バイバイ☆ダーリン 恋心編  番外編完結しました
後悔を残したまま終わった優花との恋は、辛く切ない思い出として青春の一頁を飾るのだろう。

それまでは思い通りの人生を生きて来たはずの理人だが、ここ何年かは、彼にとっても遣りきれない思いを抱えて、取り敢えず自分磨きの鍛錬の場にアメリカを選んだ。

一人の暮らしは、時に気楽で縛られるものがないかのように思える。

しかし、家族にこれ以上自分のことで迷惑となることは、何としても回避したい最優先事項であり、こんな時に優花との再会を願って、あわよくば、付き合いを続けたいなどとよく考えたものだと、我ながらどうしようもない奴だと、彼自身が一番呆れているのだ。

ハハハと乾いた笑い声を上げ、そしてひとつ大きなため息を吐く息と、さあ新しい未来を切り拓こうと不思議と思えてくるが、それでも異国での一人の生活は寂しくて、時々、昔嵯峨野兄妹と遊んだ懐かしい場面が蘇ることがある。

嗚呼、あの時のような何も知らない子供時代に戻れたらと思ってしまうまだまだヒヨッコの自分を叱咤して、少しでも家業の役に立てるように、アメリカでの日本食の今をリサーチして、こちらに新店舗を開店するのもありじゃあないかと、やる気満々の理人に皆驚きを隠せないのは事実だ。

でも何もおかしいことはないし、雨降って地固まると言うことわざもあるのだから、振り出しに戻ってやっと再起出来る目処が立った料亭を、理人はこれまで以上に盛り立てて行こうと決心したのだ。

そして、何年もの間ないがしろにしてきた花音に申し訳ない気持ちでいっぱいになり、直接会って言うことはもう叶わないけれど、一通の手紙にしたためて、謝罪の言葉を受け取ってもらいたい。

そしてひと言、おめでとうと伝えたいと理人は今さらながらに思ったのだ。



その後アメリカへ戻った理人から預かったと、悠輝が大事そうに手紙を花音に手渡す。

自室でそれを読んでいた花音だったが、帰宅した
昴に手渡して、色々終わったみたいと暢気な笑顔で呟いて言った。

それから、これが本当の理人との別れなのだと気が付いた。
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