お見合いだけど、恋することからはじめよう
唯一の救いが、朝比奈さんがハーフか?クォーターか?と見紛うくらいの超美人なのに、まったく驕り高ぶることのない「普通」の人だったことだ。
出社初日にもかかわらず、いきなり飛び出た大橋さんの「先制攻撃」に対し、いっさい怯まずさらりと受け流した朝比奈さんはあたしに、
『わたし、中身は見た目ほど派手じゃないのよ。なるべく、波風立てずに生きていきたいの』
と飄々と言った。
さらに、なんとあたしのことまで気遣ってくれて、手が空いたときには副社長の執務室からわざわざ秘書室まで来て、
『水野さん、一人で大変でしょ?わたしにできることある?』
と言って業務を手伝ってくれるのだ。
現在二十八歳の彼女は、皇室の方々がお出になったカトリック系の女子大を卒業後、あさひJPNフィナンシャルグループに入社してグループ秘書の仕事をしていたそうだから、あたしなんかよりもずっと手際よく業務を遂行できる。
ちなみに、大橋さんは艶やかな黒髪に和風な瓜実顔の美人で、いろんな意味で「対極」だった。
本当に大橋さんのような「社長令嬢」じゃなくて、心の底からホッとした。
……さすが、副社長だと思う。
お見合いで知り合った二人は、世間では「平成最大の政略結婚」って言われているけれど、副社長は名家のお嬢さまと会社のために結婚するわけじゃなく、朝比奈さんのそういう「人柄」に魅かれての結婚なのだ、と思った。