お見合いだけど、恋することからはじめよう

「……あれっ、七海、あんた、そんなネックレス持ってたっけ?」

姉があたしの首元をじーっと見つめている。

「ふふん、田中さんからの誕生日プレゼントだよーん♡」

トップにアメシストの輝くネックレスがみんなによく見えるように顎を上げた。

「二月は七海の誕生月だもんね。会ってまだ二度目なのに、ちゃんと覚えてくれてプレゼントまで用意してくれるなんて、諒志さんてやさしいわねぇ」

……諒くん、おかあさんからもポイント獲得だよっ。

「あら、七海にしてはめずらしく大人っぽくて素敵じゃない。アメシストの周りをダイヤが取り巻いてるのね」

母もあたしの首元をじーっと見る。

「おとうさん、わたしも今度の誕生日にこういうのがほしいわぁ……あ、その前に結婚記念日があるわね」

父がまるで「田中、余計なことを」というように顔を歪めている。

……あらら、諒くん、呆気なくポイント没収だ。

「……ね、そのネックレスって、すっごく洗練されててオシャレなんだけど、どこの?」

姉が訊いてくる。そういえば、姉のようなキャリアウーマンが似合うブランドだもんなぁ。

Jubilee(ジュビリー)だよ。そのあと銀座の松波屋のショップに連れて行ってもらって、一緒に選んで買ってもらったの」

うれしくて、ついあたしの頬が自然と緩む。

「……へぇ、あいつでもそういうことをするんだな」

父がさも興味深そうに、ニヤリと笑う。


……確かに、職場では「無機質な人造人間(サイボーグ)」だったら、意外だろうな。

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