お見合いだけど、恋することからはじめよう

お見合いに臨むにあたって、あたしが『苦しいから(成人式に買ってもらった)振袖は絶対イヤ!』と言ったら、父が『上から下まで一式買ってやる』と言うので(超ラッキー♪)、あたしは会社でお見合い結婚では「先輩」にあたる朝比奈さんに、どのブランドがいいか相談した。

「……やっぱり、二十三区とかセオリーとかが無難ですかね?」

すると、誠子さんが待ってました!とばかりに首を突っ込んできた。

「七海のお相手って、そこそこのおうちなんでしょ?」

実は、彼女は今までにかなりの場数を踏んだ「お見合いマイスター」だった。

……しかし、それは、未だ「ご成婚」に至っていないという「(あかし)」でもあるのだが。

「だったら……あちらの親御さんにもウケのよい、いかにも『いいところのお嬢さん御用達』で『身持ちが固そう』に見える、メタボ級の猫を被れるブランドといえば……」

考えてくれるのはありがたいが、縁遠い「マイスター」からのアドバイスって、なんだかあたしまで、御縁がはるか遠ぉーくに行ってしまいそうな……

「そうねぇ……お相手に好感を持ってもらえる落ち着いた清楚な感じで、それでいて七海ちゃんのふんわりしたかわいい雰囲気にも合うといえば……」

超イケメン副社長とご婚約されて、とびっきりの御縁がやってきた彩乃さんなら、向こう三軒両隣に生息するあたしにも「ご利益」が期待できそう!ぜひ、お願いします!!


……だが、しかし。
偶然にも誠子さんと彩乃さんの声が重なった。

「「ミス・アシダがいいんじゃない?」」

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