お見合いだけど、恋することからはじめよう

お見合い相手は金融庁に勤めるT大卒のキャリア官僚でもある。

「そんな人だったらいくらでも『自力』で結婚相手が見つかるじゃないですか?
だから、あたし、思い切って訊いたんです」

サーモスのスープジャーに入れたミネストローネを食していた彩乃さんが、肯きながら聞いてくれている。

……さすが、「上級者」は手が込んでいて、すっごく美味(おい)しそうだ。
しかも、お弁当なのに熱々ときてる。
こんな料理をつくってもらえるなんて、婚約者の副社長は幸せ者だなぁ。

「『あたしとお見合いするのは、出世のためですか?』って。『もしそうなら、あたしなんかより、同じ官僚の姉の方がいいですよ?』って」

……つい「ワガママ」が出てしまって、お相手に言いたい放題言ってしまったことは、あまりにもこっ恥ずかしいから、ナイショにしておこう。

サーモスとアフタヌーンティーとさらにカルピスまでもがコラボした青い水玉のケータイマグ(去年の誕生日に姉がプレゼントしてくれたものだ)に入った玄米茶(職場でカルピスはちょっとね)を、ごくり、と飲んで、後ろめたさを紛らわす。

「……で、相手はなんて答えたの?」

誠子さんが身を乗り出してきた。
その瞳がらんらんと光り輝いている。

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