ライタルス
詐欺師
白い空間、床一面にはオセロ盤の目のように黒い線が薄く縦横と交差ている。一つの一つの目が人ひとり立てる程度のサイズとなっており、約30cm四方と思われるその目が20×20並んでいることから1辺6mほどの部屋だと予想出来た。
白い壁には赤青黄黒4色のボタンが四方に設置されている。
各色25個ずつ存在するボタンは一体何なのか、全くわからない。
そう、俺は突然ここに運び込まれた。

10時間前___

「はいもしもし」

『あー、もしもしオレだけど』

「あ、タケちゃんかい?」

『そうそう、ばあちゃん元気?』

「この通りピンピンさね、毎週毎週ありがとうねぇ」

『いやいや孫として心配するのは当然だから』

「タケちゃんは優しいんだねぇ」

『そんなこと無いってば』

「で、今日は何の用だい?」

背後の仲間をチラリと見た高尾は口角を上げニヤけた顔を見せる。

『いやーそろそろ漫画家デビュー出来そうでさ、そのために原稿用紙と道具をたくさん買わないといけなくてお金が足りないんだよね』

「あららら、そりゃ大変だねいくらだい?」

『それがさぁ、20万』

「あらまぁそんなにぃ」

クスクスと笑いを堪えきれない仲間たちを見て静かに注意する。

『この前は50万も借りちゃったから申し訳ないなと思ったんだけど、やっぱバイトだけじゃ限界があって』

「タケシも頑張ってるんだねぇ、あんたの夢の為ならいくらでも出すよぉ」

『ホントいつもごめんねばあちゃん、じゃあ今日中に振り込んどいて』

「はいよぉ、じゃあ頑張るんだよ」

ゆっくりと受話器を置いたと同時に4人の仲間たちが20万20万と飛び跳ねる。

「ふぅ、鴨ババア最高だわ」

「でももっと貰ってもよかったんじゃねーの?」

「大嶋、欲張るのはただのバカだ、こういうのは欲が出すぎるといつの間にか一度に数百万なんてことになり兼ねねー」

「うっひょー!夢みたいな額だなそりゃ」

「ま、ババアのおかげで余裕で集まってんだけどな」

ジュラルミンケースに敷き詰められた大量の百万円の束の光景に、ピアスが光る舌を見せながら大口を開けて笑う大嶋。

「次はどこ狙いますか高尾さん?」

「峰崎が決めていいぞ」



「よっしじゃあキャバ行くか?それともソープ?」

「キャバのネーチャンでしょー!」

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