その身体に触れたら、負け ~いじわる貴公子は一途な婚約者~ *10/26番外編
父は私腹を肥やすために領民のお金に手をつけるような人ではない。何か深いわけがあるはずだ。ましてや、爵位のために公爵家に入ったのでもない。自分はフリークスの娘であることを恥じる必要はないはずだ。
彼女は公爵家の令嬢として、グレアム公に付いて最後まで笑顔を崩さずに挨拶をして回った。もしかしたらフレッドに会えるかもしれないと思ったけれど、会場に彼の姿はなかった。
今は何も考えてはいけない。公爵家とフリークスの家に恥じない振る舞いに集中しなければならないのだから。
ところがそんな彼女をあざ笑うように、甲高い声が耳を打った。
「フレッド様は、今やヴィオラ殿下のお気に入りなんですってね」
「先日の夜会では、殿下とフレッド様が仲睦まじげに話をしていらっしゃるところを見かけた方もいたそうよ。お似合いだったそうだわ」
「婚約発表まで秒読みかもしれませんわね。喜ばしいことですわ」
オリヴィアは唇をきつく噛み、喉に突き上げた熱い塊を飲み下さなければならなかった。
まったく知らなかった。
婚約は解消されたのだから、フレッドが誰と想いを交わそうと彼女に口出しできることではないけれど。
彼女は公爵家の令嬢として、グレアム公に付いて最後まで笑顔を崩さずに挨拶をして回った。もしかしたらフレッドに会えるかもしれないと思ったけれど、会場に彼の姿はなかった。
今は何も考えてはいけない。公爵家とフリークスの家に恥じない振る舞いに集中しなければならないのだから。
ところがそんな彼女をあざ笑うように、甲高い声が耳を打った。
「フレッド様は、今やヴィオラ殿下のお気に入りなんですってね」
「先日の夜会では、殿下とフレッド様が仲睦まじげに話をしていらっしゃるところを見かけた方もいたそうよ。お似合いだったそうだわ」
「婚約発表まで秒読みかもしれませんわね。喜ばしいことですわ」
オリヴィアは唇をきつく噛み、喉に突き上げた熱い塊を飲み下さなければならなかった。
まったく知らなかった。
婚約は解消されたのだから、フレッドが誰と想いを交わそうと彼女に口出しできることではないけれど。