overdrive
「危ない!」


突然、強い力に捕まえられた。
その力は私を軽々と持ち上げ、柵から引きはがす。


「ひゃあっ」


仰向けに倒れそうになるが、腰に回された腕にがっしりと支えられ、踏みとどまった。

そして、爽やかなフレグランスと男の人の匂いに、ふわりと包まれる。


「司……さん?」

「まったく、何やってるんだ君は」


荒い息が首筋にかかったかと思うと、私の身体はぎゅっと抱きしめられた。
いつもより、ずっとずっと熱い彼の体温に――


「だって……私、びっくりしたの。司さんが、いなくなってしまったから」

「びっくりしたのはこっちだ。あの高さから落ちたらどうなると思う」


司さんは強引に、私の身体を反転させた。額に汗を浮かべ、真剣な表情で見下ろしている。


「美結?」

「ごめんなさい……」 


私は涙を零していた。
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