課長、サインを下さい!~溺愛申請書の受理をお願いします。
 私に相手でもいれば、と伯母も父も言うけれど、そんなものはここ八年いた例が無い。

 大学の時に少しだけ付き合った人と別れた後はしばらくそんな気になれず、就職してからは仕事に熱中して恋人が欲しいとも思わなかった。

 というより、お一人様の魅力の虜になってしまっている。
 
 一人暮らしの誰にも邪魔されない快適さ。
 この寛ぎに空間に他者を呼ぼうとも思わない。まして男性なんて。
 料理もそこそこするけど、主に酒のアテだし、テレビを見ながらつまみを食べつつ好きなお酒を飲む。
 休みの日は寝たいだけ寝て、気が向けば昼からビールを飲んでダラダラすることもある。

 そう。世に言う、干物女。

 いや、干物なんて可愛いものじゃなくて、骨しか残っていないミイラ女かもしれない。

 心もお肌もカラッカラ。

 だけど、こんな快適な暮らしが続くなら別に潤いなんてなくてもいいか、と私は心からそう思っていた。



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