課長、サインを下さい!~溺愛申請書の受理をお願いします。
 コーヒーショップで他愛無い話をしながら少しのんびりした後、雄一郎さんは再び私を車に乗せて移動した。

 「少しドライブでもしようか」

 そう言って車を走らせる。
 気付くと陽が西に傾いて街が夕陽に包まれている。車は湾岸沿いのバイパスを走っていた。
 
 窓ガラスの向こうの夕焼けをぼんやり眺めていると

 「美弥子。」
 
 雄一郎さんに呼ばれて彼の方に向く。

 「お見合いの件、俺に任せてくれるか?」

 「え?」

 「来週の土曜日、俺も一緒に着いて行くから。」

 「雄一郎さんも…ですか?」

 「俺が一緒に行ってちゃんと説明するから、お前は心配するな。」

 「で、でも…」

 そんなことをしたら、彼が悪者になってしまう。

 彼にそう反論しようと思った時、信号で車を停止させた彼が私の方を見て微笑んだ。

 「まあそう心配そうな顔しなさんな。俺を信じてくれるんだろう?」

 「……はい。」

 「いい子だ。」

 彼はそう言いながら私の口の端を唇でかすめ取った。

 「あと、敬語。直そうな。」

 「……はい。…分かった。」

 赤い顔で返事をする私の唇を、今度はしっかりと奪ってから前を向きなおした雄一郎さんは、青信号で車を発進させた。
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