一途な2人 ~強がり彼氏と強情彼女~
とは言え、あれからもう10年以上も経っているし
それだけの年月があれば、人が変わるには十分だろう。

・・・私は大して変わり映えしてないけど。

頭を振り払い、仕事に意識を戻す。
ささっとこの本を全て並べて、早くここから離れたい。

「今話題の社長の本って言ったって、すごい量ね。」
出版は大手の出版社だし、豊沢グループの息もかかってるんだろうけど、それにしても多いな、と腰をかがめて並べていると、

「来月ここで、その社長のサイン会があるんですって。
購入者へ整理券を配るからこの量らしいわよ。」

「は?」

サイン会・・・・?

本店やショッピングモールの店舗では、小説家や絵本作家のサイン会なんかをやったりもするけど、
ここでサイン会なんて、3年いて初めて。

ただサイン会といっても、営業中の店舗の片隅やパーテーションで区切ってやることがほとんど。
それ以外は通常営業。
きっと彼の姿を見ることもないだろう、と思ってた。

「ここでやるなら、その若社長とお近づきになれちゃうんじゃない、設楽さん。」
「あら、どうしましょ!」

なんて冗談まで交わしていた。

まさか、あんなことになるなんて、思いもせず。
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