朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】


愛らしい、だけじゃない。……愛おしい。この子が。
 

自分だって辛いくせに、こうやって誰かを抱きしめることが出来る。


「……ありがとう、咲桜」
 

本当にこの子は強い。


だからこそ不謹慎ながら、さきほど泣きついてくれたことが嬉しくもある。
 

しばらくそのままお互いが腕の中にいた。
 

偽モノ婚約者。
 

教師と生徒。
 

家族になる、という言葉の意味をちゃんと理解しているかは不安だけど――このまま。


咲桜を抱きしめていられる時間だけ、一緒にいることをゆるしてもらえたらいい。
 

咲桜の父親の在義さんに、咲桜の親友に、そして世界に。
 

――この子が、俺の一番大事な人だ。

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