朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】

side咲桜14



誰にも言ってはいけないと思っていた。笑満にだって言えなかった。
 

愛されている自分をゆるせないでいた。
 

誰かに大事にされる度、心は痛んだ。


笑顔を向けられる度、ごめんなさいと心の中で謝っていた。


自分はそんな存在じゃない。大事にされたり、感謝されていい、いのちじゃない。
 

罪を背負っていないと、自分は生きていてはいけなかった。
 

記憶喪失で身元もわからない母。


仕事を辞めてまで結婚した父。


父の許嫁のような存在だった人。
 

誰も彼も、不幸したのは自分でなくてはいけなかった。
 

自分には罪がある。だからがんばって贖罪するのだ、その理由がないと生きていられなかった。
 

生きる理由がほしかった。


生きていていい、理由が。
 

私が私に決めた理由は、贖罪(しょくざい)だった。

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