一途な御曹司に愛されすぎてます
 扉のすぐ前でそわそわしているとノックする音が聞こえて、心臓が喉元まで大きく跳ね上がった。

 き、来たー!


「矢島様、階上です。お迎えに上がりました」

「い、今開けます!」


 上ずった声で答えて扉を開けると、目の前に専務さんが立っている。

 艶を抑えたダークなスーツと薄いカラーシャツに着替えた彼は、少し濃い目の臙脂色のネクタイを締めて、胸元のチーフのアレンジがパッと目を引く。

 あのスーツもビジネス色が強くてカッコよかったけれど、このスーツのお洒落感もすごく素敵。

 さすがイケメンはなにを着ても似合う……。


「ご準備はよろしいでしょうか? もしもルームサービスをお望みでしたらご遠慮なくお申しつけください」


 ぼうっと見惚れていたら、専務さんが丁寧な物腰で聞いてきた。


「あ、いえ、大丈夫です。行けます」


 私はテーブルの上に置いてあったバッグを手に持って、カチコチに緊張しながら専務さんの前に立った。

 あれほど鏡の前で確認したのに、いざ彼の前に立つと強い不安が込み上げてくる。
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