イジワル御曹司ととろ甘同居はじめます
母たちが私たちの名を呼ぶ声が聞こえると、

「はい。今行きます」部長の爽やかな声が響く。

だけどその声は偽りにしか聞こえない。

「ほらさっさとしろよ」


吐き捨てる言葉に私はどうしようもない孤独感と虚無感しかなかった。


引っ越しの翌日、いつもの様に早起きしてお弁当を作った。

昨日はあまりに衝撃的な事実を知り、何だか眠れなかった。

部長にとって私の存在が気にくわないのにこれからどうやってここで暮らせば良いのだろうと…

笑顔で顔を合わせて朝食なんて気分にはとてもなれず、お弁当と一緒におにぎりを作った。

しばらくすると母が起きてきた。

「あらっ、今日は早いのね」

「うん、ここから通勤するのは初めてだから今日は早めに行こうかと思って」

母は時計を確認にする。

「早めにって言うけど早すぎない？なんならお父さんか建一君――」

「いい。そういう自分だけ特別っていうの嫌だし…それに会社では旧姓のままで通すつもり。七瀬に変わったらやっぱり何かしら噂が立つし、これ以上目立ちたくないの」

言った後に後悔した。これじゃあ母の再婚で自分は損しているって言っているようなものだ。
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