イジワル御曹司ととろ甘同居はじめます
「住み慣れた家が落ち着くって事です。どんなに広くて何でも揃ってても落ち着かないんです。
お風呂だって…足を伸ばせる広々とした風呂より、私は足を伸ばせなくても落ち着ける前の家の方が良いんです」

昨日の事を思い出すと、とても目を見てはなせず視線を外す。

「もう~。こんなこと言ってるんですよ~」

本当の事だもん。だからマンスリーマンションに住むって言ってるのにこの男はだめだとか言うし全く訳わかんない。

「彼女の気持ちは分からなくもないよ。昨日まで他人だった人がにいきなり家族になるのって当人同士はいいだろうけど、それを取り巻く家族は不安になったりするのは仕方がないことだしね」

めちゃくちゃいい人ぶってムカつく。どの口が言ってんでしょうね。

そもそも不安の原因はあなたでしょと言ってやりたい。

でも…私が思っているように部長も昨日まで赤の他人だった私が家族になったことに不満があったり納得出来なかったとしたら?

私を庇っていった言葉ではなく自分に言い聞かせるために言ったとしたら・・・

その方がしっくりくるかもしれない。

「文佳。私ちょっと早めに戻らないといけないから行くね」

「え?うん、わかった」

私は私物袋を持って、視線を合わさず軽く会釈してその場を去った。
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