【医者恋シリーズ2】 冷徹ドクターのイジワルな庇護愛
そこまではっきり突き付けでも、惚けるつもりなのか、それとももう忘れてしまっているのか、六渡寺さんは強気な表情を変えない。
その罪の意識もない姿に、募る憤りは噴火する火山のように爆発した。
「この間連れてたプードルの、ラブリちゃんはどうしたんですか?」
「ああ……それが何か?」
「……保健所で、見ました。殺処分される犬たちの中に、ラブリちゃんを見ました」
事実を突き付けられ、六渡寺さんは言葉を失う。
でも、ナイフのように尖った目で私を睨み付ける。
「どうしてそんな残酷なことができるんですか⁈ 人間と同じように、動物だって生きてます! あなたに捨てられて、どんな想いでラブリちゃんがこの世を去っていったと思ってるんですか⁈」
抑えきれない気持ちをぶちまけると、気付かないうちに涙が溢れ出していた。
鼻と喉の奥が痛く苦しい。
「ちょっと、蓮せんせ〜い!」
私の上げた声に何事かと思ったのだろう、奥の診察室から辻先生がいつの間にか姿を見せていた。
「この人、ひどいことばかり言うんですけど! こんな家政婦、即刻クビにした方がいいですよ!」
さっき私に反論していた声とトーンを変えて、六渡寺さんは辻先生に訴えかける。
涙の先に見た辻先生は、冷たく鋭い視線で六渡寺さんを捕えた。
「彼女の言う通りだ」