【医者恋シリーズ2】 冷徹ドクターのイジワルな庇護愛


病院の外に出ると、むせ返るような暑さにくらっとくる。

体力が落ち気味の今の自分の状態にはなかなか応えるものだった。

今日は仕事中も、パートのおばさま方に「体調大丈夫?」と何度も聞かれていた。

じゃこの具合が悪くなってから、まともに睡眠も食事も取れてないのは確か。

なんとかやっているけど、自分の状態がかなり参っているのは己が一番よくわかっている。

じゃこは無事に回復しているようだから、その点はホッとはしたけれど、次に私を悩ませているのは治療費だ。

格好悪いけど、事情を説明して分割払いとかにしてもらえないだろうか。

もしそれが無理だといわれたら、あと一週間ほどで給料が出るから、そこから支払うしかない。

でもそうなると、月々の支払いが厳しくなるわけで……。

決まった収入しかない中で支出が増えるとなると、必ずどこかにしわ寄せがくる。

汗ばむ首元をハンカチで拭い、見えてきた『TSUJI Animal Clinic』の看板の字にまたため息が漏れる。

じゃこに会える嬉しい気持ちの反面、治療費の相談をしなくてはいけないと思うと気が重い。

病院の入口を入ると、涼しい空気にふわっと意識が遠くなるのを感じた。

< 30 / 112 >

この作品をシェア

pagetop