【医者恋シリーズ2】 冷徹ドクターのイジワルな庇護愛
「すっ、すみません!」
慌てて起き上がろうと、横たわった先生の耳の横に手の平をつく。
思わぬ急接近でバクバク心臓が強い音を鳴らし始め、どこを見たらいいのかすらわからなくなっていた。
だけど、膝を立てて身体を起こしかけた時、先生の手が私の両二の腕をおもむろに掴む。
反射的に先生の顔を近距離で見下ろすと、じっと真っ直ぐ見つめられていた。
風が吹いて、倒れ込んだ私たちの周囲に生い茂る草葉が踊るように揺れる。
「せん、せ――」
呼びかけは下から近付いた唇に封じ込められ、重なったほのかに温かい感触が意識を吹き飛ばす。
触れただけの口付けはほとんど一瞬のことで、動けない私を先生は何事もなかったように抱き起こしてその場に座らせた。
「すごい衝撃だったな……大丈夫か」
「へっ、え、あっ、はい……」
返事もまともに出てこない。
驚いて跳ね上がってしまった私の鼓動は、事の重大さに着々と大きな音を響かせていく。
「アレサ、おいで」
俯いたまま手足についた草や土を払っていると、先生はイタズラの張本人アレサを呼びつける。
喜んで私の背中に飛びついてきたアレサは、何食わぬ顔をして先生に胸を撫でられていた。