【医者恋シリーズ2】 冷徹ドクターのイジワルな庇護愛


何度も何度も、あの時のあの瞬間が頭の中で再生される。

掴まれた腕に食い込む指の感触。下から見上げられた真っ直ぐな眼差し。そして、不意に奪われた唇――その温度も……。

気のせいかと思えるような一瞬の出来事だった。

だけど、ありありと身体に刻み込まれた感覚が、現実だと証明している。

辻先生のところにお世話になってから、事あるごとに接触をされて、気付けば変に意識をしている自分がいることに気が付いた。

先生の方はなんの意識もしていないと、手に取るようにわかる。

無意識だったり、勢いだったり、時にはからかって私に触れている。そう、動物たちと同じような感覚なのだ。

じゃあ、あの時のキスも同じなのだろうか。

先生が私に対して、何か特別な気持ちや想いがあるとは考えられない。

だとすれば、やっぱりあの時、あの瞬間、何かの衝動で唇を奪ってしまったんだと思う。

現に、あの後の帰り道も、その後の日々も、先生にはなんの変化も見られない。

私だけが変に意識して、先生を真っ直ぐ見れなくなってしまっているのだ。

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