【医者恋シリーズ2】 冷徹ドクターのイジワルな庇護愛


そんな話を聞いて、いつだかムロくんが言っていた話が頭をよぎる。

何匹も飼っていたわけじゃなくて、捨てては新しい子を購入していたのだ。


「先生、あの子連れて帰りましょう? もらっていくこと、できるんですよね?」


動揺する私に対し、辻先生は冷静な目をして犬たちを見つめている。

そして、やっぱり落ち着き払った声で「それはできない」と答えた。


「どうしてですか?」

「それをしても、彼女はまた同じことをきっと繰り返す。その度に全部を引き取るつもりか?」

「それはっ……」

「気持ちはわかる。だけど、引き取るからには最期を看取れるのか、考えなくちゃだめだ。いっときの感情や勢いで請け負えば、ここに連れてきた飼い主たちと変わらない運命を再びたどることになる」


先生の言っていることに一寸の間違いもなかった。

だけど、ついこないだ連れられていた姿を思い出すと、どうしようもなく遣る瀬ない。

自分にはどうすることもできない現実を突きつけられ、その場から動けなくなっていた。


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