四つ脚の絵書き歌

2 ―少年の迷走―



―――――家族で紅葉狩りに来ていたというのに、いつの間にかはぐれてしまった。もう陽が随分と傾いてきている。
祥一は胸のうちに湧き上がる焦燥感を必死に抑えながら、スマートフォンの灯を頼りに道を探していた。
救助を要請しようにも、残念ながらここは圏外だった。

本当はこんな暗闇の中を歩き回るのは得策ではないのだろうが、せめて圏内に入らねば。祥一を突き動かす理性的な思考が、かえって焦りを生んでいた。

紅葉狩りに非常食だの防寒具だのをわざわざ持ってくるほど用心ではない為、陽が暮れてしまうと相当まずいことになる。秋の山奥で野宿して夜を越すなど、到底考えられない。
どうしてはぐれてしまったんだろう。
少しでも人工の臭いがしそうな物を懸命に探し回りつつ、祥一は昼間の自分の行動を振り返っていた。
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