火事場の王子様
課長さん
「おはようございます」

「あ、おはよう」

唯一の後輩、御影 玲(24歳)が出勤してきた。

「聡美さん、今日も早いですー。私にしては珍しく20分前に来たのにぃ」

「モチベーション挙げてから仕事したいから、静かな所で気持ち入れ換えたいのよねぇ。
今朝は折角気持ちよく起きたのに、あの満員電車で一気に気持ちが萎えちゃうのよ」

「分かります。あ、でも私今日はイケメンサラリーマンの傍に乗ったから、いい感じにテンション高いんですよねっ。
めっちゃいい匂いしてたしぃ、はぁ~」

「それ、猛くんの前で言っちゃ駄目よー。あの子、私生活がもろ仕事に影響するから。ちゃんと彼氏のテンションもアゲアゲでお願いしますよ。」

「うわぁ、今のおじさん臭いですー」

「………」


不穏な空気を察知して、玲は給湯室へと消えた。


玲は同じ部署の橋村 猛(24歳)と社内恋愛中だ。

まぁ、この会社は社内恋愛禁止ではないし、部署内の人の年齢が高いせいか、若い二人を暖かく見守っている。


私はいつ恋愛してたっけな?

すぐには思い出せないほど遠い記憶のように感じるが、…まぁ、そんなに盛り上がりもなかったしな。始めから終わりまで。

今、そういう状況に居たとしても、自分が燃え上がるような恋愛なんて出来そうな気がしない。

多分、そんなに夢見てもないしな。王子様なんて登場しないのは分かっているし。


頭の中でブツブツ呟きながら、いつも通りに伝票整理を始めた。
< 2 / 7 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop