ラヒの預言書

ソルが椅子に腰掛けると、キルバルは、綺麗な飾り細工が施された箱をコトンと机の上に置いた。


「.......とても綺麗な飾り箱ですね。」


「貝の殻で出来ているそうだが、見せたいのはこの中身だ。」


キルバルに促されるまま慎重に箱を開けると、中には筒状の金細工が入っていた。

少しくぐもった淡い緑色の翡翠石もついている。

ここまで質のいい翡翠は初めてで、息を呑んで眺めていると、長く綺麗な指がその飾りを手に取った。


「気に入ったか?この髪飾りは、私と対になっている。」


「対に?」


「そうだ。妃として正式に迎え入れた証になる。本来ならば、王様と皇后様に許しを得るのだが、今回ばかりは王様から私以外の皇后の面会は禁止されているゆえ、側室ならばと特例で私が承諾を得て来た。一番下の位だが、この飾りは一級品だ。ここに付いている石は、そのままその者の身分を表す。絶対に無くすなよ?いいな?」


「.......でも、これ.......本当に私が持っててよいのですか?」


「あぁ.......私の唯一の妃だからな。」


「えっ」


ゆっくりと上がったキルバルの手が、ソルの頬に掛る髪を一筋すくう。


「キルバル様!なにをー」


「動くな」


「はっはい!!」


キルバルに翻弄されながらも、微動だにせず黙って待っていると、髪を少し引っ張られる感覚と共に心地良い金属音が耳元で響いた。


「.......似合っている」


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