出稼ぎ公女の就活事情。
「ムダなこたやめとき」
「モンタさん?」

 ムダとはどういうことだろう。
 そう疑問に思いつつも、わたしは悩む。

 ミラさんは建物のすぐ前にいる。
 その側には御者の男性も。
 今すぐこの手を振り払ってそちらに駆け出すべきだろうか、と。

ーーモンタさんを相手にこんなことを悩まないとならないなんて……。

 ズキリ、と胸が痛んだ。

 わたしはモンタさんが好きだったんだ。
 リルに向けるような気持ちではないけれど。確かにそれは好きという気持ちで。

 気のおけない友人ができたように感じていたのだ。

 一国の公主である以上致し方ないが、どうしても他人には一歩引いて接せられるのが当たり前で。けれどモンタさんの前でわたしはただの仕事を探す女の子でいられた。

 モンタさんは全然そんな風に思ってなかったのかも知れないけど。
 それでもいつか、友人の一人として思い出してくれたらと。

 そういう人だったのだ。


「仕事なんざいくら通ってみても見つかるわきゃない。姉ちゃんに仕事させんように裏で手ぇ回されとんのやから」

 俯いて思考の澱に沈んでいたわたしは、モンタさんの言葉に顔を上げた。
 今度は、まっすぐにわたしを見るモンタさんと目が合う。

「……ここやとわいが怒られるから」

 握った手を引かれて、一瞬躊躇してから引かれるままに足を前に出した。

ーー嘘かも知れない。

 きっとついていってはいけない。


 だけど。
 気になってしまった。

 モンタさんが告げた言葉は、わたしがずっと心の奥底でもしかしたら、と疑っていたことだったから。

 だって、いくらわたしが人間だからって数十件も応募して一度も面接すらできないなんてあるだろうか?
 応募すらもできないことが何度も何度もあるもの?

 たった一度の面接すらできないなんておかしいとそう思っていたのは確か。

ーー裏で手を回している。

だとしたら、それは、誰が?

 

 


 
 
 
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