朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】

side咲桜⑧



お礼を言いたいのはこっちだよ。


流夜くんの存在一つで、私も色々変わってしまった。
 

……幸せな方に、変えてくれた。
 

素っ気ない鍵を両手に包んで、私はしばらくそれに見入っていた。


昼休み、旧館で渡された合鍵。流夜の部屋のものだった。
 

家に帰って、キーホルダーをつけてみた。


ずーっと前、まだ桃子母さんがいたころ三人で出かけた先で買ってもらった、桜のモチーフがついたキーホルダー。


大事な時間の思い出がつまりすぎて、大切過ぎて、今までどこにもつけることが出来なかった。


けど、この鍵に、桜はやっと落ち着いたようだ。
 

次の日曜日、一緒に出掛ける約束をした。


最後まで『デート』という単語は口に出来なかったことが情けないけど、一日、一緒にいられる日が待っている。


楽しみすぎる。

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