朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-【完】
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「昔のご近所さん?」
「うん……あたしが引っ越す前の、家の方の……」
もう放課後で授業はないので、手近な教室に笑満と一緒に入った。
笑満は小学校四年のときに転校してきた。
それ以来ずっと、一番の友達だった。
今笑満は、出窓に体育座りをして小さくなっている。
「遙音くんは憶えてないと思ってたんだけど……あたしのこと、『笑満ちゃん』って呼んだ。あの頃みたいに」
そう言えば、私のことは呼び捨てにするのに、さっき笑満のことはそう呼んでいた。
流夜くんのことは『神宮』と呼ぶし、少し話した中でもみんな呼び捨てで、敬称愛称で呼ぶ人はいなかったように思う。
……笑満だけだ。
「でも、昔の友達なら、そうですって名乗ればよかったのに」
笑満が先輩をすきなことは承知している。
入学式からずっとそう公言しているから。