演っとけ! 劇団演劇部
第8幕 アタックNo.エイト(前編)
 さて、役者も着々と増えつつ順風満帆な劇団演劇部ではあったけど、5月も終盤に向かう平和な松葉野高校では一つのイベントが差し迫っていた。
 『クラス対抗球技大会』
 ロングホームルームの時間、黒板にデカデカと書かれたその文字を僕はニコニコ顔で眺めていた。
 なんで梅雨の近づくこの時期にこんなことをやらなくていけないのかという疑問もあったが、僕はいつになくやる気満々だった。
 クラス対抗というのも、またグッドだ。
 入学当初は『ハブられっ子ナンバーワン候補』だった僕だけど、いつの間にか転校生という陰口も消え、演劇部がなくなった(と、もちろん一般生徒には思われている)今も遠藤さんと仲が良く、人を近づかせないオーラを出している(らしい)あの天才御手洗君とも気軽に話せる男として一目置かれ、僕はクラスの中でも普通に溶け込める存在になっていた。
 さらに、競技がまたベターだ。
 黒板には
『議題
  チーム分けとポジション決め』
に続き
『男子 サッカー
 女子 ソフトボール』
と書かれていた。
 やっほぅ。
 運動神経も人並みしかない僕だけど、曲がりなりにも中学校の3年間をサッカー部として過ごしてきた。
 現役サッカー部には適わないかもしれないが、ほとんど素人で固められたクラス対抗なら、ある程度活躍できることは間違いない。
「エイト、どこがいい?」
「どこでもいいよ」
 小島の質問に僕は笑顔で答える。
 できればフォワードか、ミッドフィルダーだ。
 授業中とは言っても、教室の中でチームごとに分かれ、ポジションを決めるためにみんな好き勝手座っている。
 いつもは騒ぐと怒る担任の山崎先生も、今日は何も言わない。それどころか
「いい? 負けたら校庭10周だからね」
と僕らを煽ることまで言っている。
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