ツンの恩返しに、僕は108本のバラを贈るよ
「ですが……何だ?」
「先程、現場をクビになりました。副社長を怪我させてしまったので」

「当然でしょう」と秘書が口を挟む。

「君は黙っていろ、いや、もう帰れ!」

有無も言わさぬ迫力に、「でも……」と秘書が瞳をウルウルさせる。色っぽい。
美和さんにも負けず劣らずの女子力だ。

だが、この人は……。

「嘘泣きは止めろ! そんなことをしている暇があったら仕事をしろ! 君こそクビにするぞ」

美女のウルウルにも動じず宣う。
なるほど、これじゃあ、彼の父上が心配するのも頷ける。

美人秘書は仕方なくというようにトボトボと病室を出て行く……私をひと睨みしてから。

「さて、話を続けよう」

彼女の姿が完全に消えると、副社長が「その椅子に座って」と顎でロココ調のカウチソファを差す。

早く帰りたいのだが……と思いながらも彼の鷹のような鋭い眼に逆らえず、おずおずと腰を下ろす。

「君は利口だろ?」

ん? 馬鹿じゃないとは思うが……。

「話を聞いて分かったね?」

イヤイヤ、何が分かったというのだ?

「僕はとても困っている。医者から三日も入院しろと言われた」

「君のせいで!」と彼の眼が私を見る。

「あっ、申し訳ございませんでした!」

膝にくっ付くぐらい頭を下げる。
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