君の吐息に合わせて目を閉じた

 「君のためなのに…」

 なんという親切の押し売りか。

 振り切り切れない、その悲しげな呟きに思わず足を止めてしまった。

 なんだっていうんだ。

 真面目に生きてきた、こんな女の子知らないし絡まれる理由もない。

 顔だって普通にかわいいじゃないか、僕がなにしたって言うんだ。
 
 足を止めた僕に、少女は言う。

 「…聞いてもらえるだけでもいいんです…君を救いたいだけ…」

 それだけ…と小さく零れた言葉に、胸が熱くなった。

 知らない女の子に中二病的な絡まれ方をしたのは初めてだ。

 そもそも見知らぬ女の子に話しかけられたのも初めてだ。

 学校に行く途中の通学路で、こんなびっくり体験そうそうないだろう。

 しかもその子は、何を思ったか僕を救いたい?

 何から?いや、やっぱりただの変な子か?

 神妙な顔で、両肩を抱きしめ、女の子は俯いた。

 「…なんで僕なんか…」

 「君だからだよ」

 思わず零れた言葉に被せる様に、聞いたことのないフレーズが飛んできた。

 それは弱った僕の胸によく突き刺さり、刺さったままとれないだろうなと思った。

 僕はこんな子しらない。

 僕は天使や悪魔なんて信じていない。

 ついでにいえば中二病に付き合ってあげる優しさもない。

 僕は別に、優しくないし、親切心の押し売りに付き合うつもりもない。

 それなのに目の前の女の子は、当たり前の様に僕の目の前立っていた。

 
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