高校生夫婦はじめました。

「……えーと。それはつまり……夫婦になりたいってこと?」

頷く正臣。

私は急激に気恥ずかしくなって、熱くなった顔を二人に見られないように俯く。意味がないかもしれない。耳まで熱くて、たぶん真っ赤になってしまっている。

正臣の毅然とした言葉は続く。

「結婚して、家も出ようと思う」
「……え!? そこはせめて父と同居じゃない!?」
「新居を探そうと思う」

息子の頑なな決定に、結局真仁さんのほうが折れることになった。

正臣が真仁さんにわがままを言っているところは見たことがないから、この親子にしては珍しいことだったんだと思う。私は“真仁さんを一人にするのは申し訳ない”という気持ちもありつつ、“真仁さんのところにお世話になるのはもっと申し訳ない”という気持ちもあったので、正臣と二人で協力して暮らしていけるなら、それが一番有難かった。


――――だけど現実的に考えて、子どもだけで暮らしていけるはずがない。

私は心のどこかで諦めていたんだと思う。

正臣と二人で協力して大人になって、その後もずっと夫婦として暮らしていく。
そんな夢物語みたいな幸せを、一瞬でもいいから本気で信じて、浸っていたかったのかもしれない。



“彼の本気を侮っていた”と思い知らされたのは、それから数日後のこと。
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